一二三、一二三……お願い、目を醒ましてください……伏は、伏……
寝転がされた状態で拘束され、身動きも取れないため、どうしても視界は良くない。
私はね、一度見たモノは忘れないの。それに、あの演奏を聴いてマジで感動……
一二三は身体を起こそうとして首を持ち上げると、その重さは錯覚でも何でもないと直ぐにわかる。
この子達も十二年前に消えちゃったのかしら?
一二三の目の前に、再び白蛇精が現れる。まるでその場所に最初から居たかのように。
足を取られそのまま転倒してしまう一二三、なんとか体勢を整えようとその手を伸ばすが……
離れてみて、初めて私の貴重さに気づいたんじゃないの?
わかった、わかっちゃった……四君子伊織の手記に書いてあったわ。
ダメっ! 一二三の願いが……忘れたことが取り戻せなくなっちゃうかも知れないから……そんなの、そんなのダメです。
授業は終わったはずなのに、昼間とは変わらない音。人が居て絵を描く音……キャンバスと筆がまだそこに残っていた。