作品紹介


■物語
「幸せだったよ……」

彼女は何度もその言葉を繰り返して、そして、星の階段をのぼり、月の扉を開けた――

二十世紀の後半から、ゆっくりと地球の気温は上がり始め、少しずつ海の面積が増えていく。
世界地図の形が日々、変わっていきこの世界の滅びの前兆に、誰もが気付いていたそんな中でも、人々の生活は変わることなく、今まで通りの日常を送っていた。そんな、ある日俺たちは出会い、恋をした――

事故に遭ってかつぎ込まれた病院で、その少女と出会った。少女の名前は 織姫 星《おりひめ あかり》、入院のエキスパートと微笑む笑顔が可愛らしく、どこか儚げその笑顔を守ってあげたくなる……そんな女の子だった。
同じ年、同じ学園の学生だと言うことで、俺たちは毎日会うようになり、話をして笑い合い――そして恋をした。
その恋はたった一つの恋だと信じて――

☆物語の始まりは病院で出逢った《織姫 星》の物語です。そして、一つの物語のあとは別々の物語へとその
想いは受け継がれていきます――

幼なじみの少女・川越 小枝子《かわこし さえこ》。
従妹で妹的な存在・沖奈 こるん《おきな こるん》。
同じ年だけど優しい姉のような・八香月 千鶴《はちかづき ちづる》。
そして、主人公と同じく心に深い傷を負った少女・花咲 卯里《はなさき うり》。

それは、終末の風景の中で語られる恋物語。海の欠片のようにきらきらと煌めく五つの物語が始まります。



■世界観設定

“今”よりも青く美しい地球。
人々の築き上げてきた街や文明は、その半分まで青い海の下へと消えていった。温暖化の影響による海面上昇。
それは、予測されていた以上の加速で、大地を呑み込み街は海へと沈んでいった。

そして、サトリ病……
二十世紀の終わりごろに、原因不明の病が流行し、人類はその数を半分にまで減らしてしまった。
流行直後は、あまりにも多くの人間が発病し、伝染病と噂されていたが、その後の研究で人類のもともと保持していた遺伝子の変節が原因であると言われるようになった死病。もともと全人類がこの病気に感染しており、生き延びた人間はたんに発病していないだけなのだ。

人は減り、住む場所もそれほど必要はなくなってしまったから、どの国でも本当に必要な区域以外は海に呑まれるままにしていたのだという。

そして、それから数年……
人類の半数近くを殺した病、サトリ病の流行は収束へと向かっていた。そして、大地の多くを海に戻したことであと十数年もすれば温暖化も止まるのだという。

しかし、それはもう少し先のこと。
これはまだ、人の数を半分にまで減らす恐ろしい病と、想い出を刻んだいくつもの街が、青い海に呑まれていく……大切な多くのものを失っていく時代。
これは、そんな時代の物語。


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