ふぁみ☆すぴ!! しょーと・すとーりー ◆リュセ編◆



 戦うことは好きかもしれません。
 リュセはおバカだから、考える事より、身体を動かす方がきっと得意なんです。
 身体を動かすこと。つまり、戦い。
 リュセが戦うのも……きっと好きだから。
 ついさっきまで、そう思ってました。

 でも、今は違います。
 リュセ、真剣に悩んでいます。

 目の前には人が倒れています。
 さっきまでリュセと戦っていたオジサンです。
 お父さんが言いました。リュセは魔王を殺すために生まれたんだって。
 リュセは魔王を殺す者。このオジサンは魔王の一族。
 だから、戦って、戦って、リュセが倒したんです。

 だけど、思うんです。
 リュセは本当に、これでいいと思っているのでしょうか……

「こ、小娘よ! なぜワシを殺す!?」
「ダメですか?」
「だ、ダメとかそういう問題ではないだろう!? 人殺しは犯罪です!
 やっちゃダメ! お父さんに教わらなかったか!?」
「でもリュセは、魔王を殺す者だから……魔王一族は殺せと教わりました」
「よ、世も末だ……そんな教育、間違っているぞ!?」
「間違っているのですか?」
「よく考えるがいい、小娘! 自分の一族を殺されたらどう思うか!」
「一族……?」
「お父さんとかお母さんとか、まぁいろいろな人のことだ! 友達とかでもいいぞ!?」
「お父さん……友達……殺されたら……」
「たとえばワシが、お前のお父さんとかを殺したとすればどうだ!?」
「……そんなことはさせません。あなたを殺します」
「え、ちょ、そういう話じゃなくて、まっ、ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

 リュセは生まれてから時間があまり経っていません。
 ですからまだ、何も知りません。何もわかりません。
 それでも考えて、考えて、わかったことがあります。

 人を殺すのは悲しいこと。殺されるのも悲しいこと。
 リュセのお父さんや、せっかく友達になったシンイチ、それにパム……
 その人達が殺されるのは、凄く悲しいことです。
 そんなことは絶対に合ってはいけないと思うのです。

 きっとそれは、魔王の一族も同じ。

 魔王の人にも、お父さんやお母さんがいると思うのです。
 友達もいると思います。
 その人が殺されたら、きっとみんなは悲しむと思うのです。
 そんなのって、行けないことです。酷いことです……

 でも、リュセはどうしたらいいのでしょう?
 リュセは魔王の一族を殺すために、お父さんに作られました。
 リュセの使命は、魔王の一族を根絶やしにすること。
 使命を果たさないリュセには、存在意義がないとお父さんは言ってました。
 存在意義がない。つまり、消されてしまう。
 そんなのはイヤです。せっかくみんなと出逢って、お友達になれたのに……

 お腹が空いたとき、助けてくれたパム。
 いつも面白いことをしてるのに、さりげなく優しくしてくれるシンイチ。
 パンの美味しいスセリと、委員長や学園のみんな。
 せっかく出逢うことが出来たのに、その人たちと会えなくなってしまうのはイヤ……

「リュセ……どうしましたか? リュセ……」
「あっ……お父さん……」
「行きますよ、リュセ。この地の魔王一族は滅びました。残るは地上だけです」
 リュセはお父さんに逆らえません。
 逆らったらきっと、すぐに消されてしまいます。
 だけどこれ以上、魔王の人も殺したくない……


 リュセはお馬鹿ですから、どうしたらいいのかわかりません。
 リュセ……どうしたらいいですか……?


【終わり】


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