ふぁみ☆すぴ!! しょーと・すとーりー ◆スセリ編◆


 朝はパンを持って、お兄ちゃんの家へ。
 チャイムを鳴らして、鍵を開けて、お家の中に入って。
 暖房を付けて牛乳を用意していると、お兄ちゃんが起きてくる。
 それはいつもの朝。

 お昼は学園で、二人一緒にご飯を食べるの。
 週に二回は、学食で。
 週に三回は、私の持ってきたパンで。
 暖かい日は屋上で。寒い日は教室の机で。
 昨日のテレビの話や、新しい漫画の事を話しながら食べるご飯。
 それはいつものお昼。

 夕方は一緒に帰って、お家の前でお別れ。
 私はお店のお手伝い。お兄ちゃんはアルバイト。
 商店街の方で働いているって言ってたけど、お兄ちゃんは何屋さんなのかな。
 そういう私のお家は、パン屋さんなの。
 夕方になると忙しいから、いつも手伝ってるんだよ。

 ……っていうのが、ちょっと前までの私の生活でした。
 でも今は、ちょっとだけ違うんです。

 朝は、お兄ちゃんがパンを取りに来る。
 量は二人分。お兄ちゃんと、パムさんの分。
 パムさんは私のパンのことを、凄く気に入ってくれてるみたい。
 沢山食べてくれるのが嬉しいから、私もつい沢山用意しちゃうの。

 お昼は3人で一緒。
 でも最近は、お兄ちゃんとパムさんが一緒に学食に行くことが多いかな?
 私はこよりちゃんとか、シャロンちゃん達とご飯を食べることが多くなったみたい。
 シャロンちゃん達はいつも面白いことを言って、笑わせてくれるんだよ。

 夕方はお兄ちゃんとパムさん、私の3人で帰宅。
 途中でラーメン屋に寄ったり、お買い物をしたり。
 特にパムさんは人間の世界を全然知らないみたいで、興味津々。
 いろいろ教えているウチに、私も新しいことを発見しちゃったりするの。

 お兄ちゃんが間違って召喚して使い魔にしちゃった女の子。パムさん。
 私からしてみれば、パムさんは新しい友達。
 話してるだけでも面白いし、毎日が賑やかになるのは、とても良いこと。

 ……なのに、なんでかな。
 最近、どこか寂しく感じるの。

 パムさんは私の友達。お兄ちゃんは仲良し。
 でも、そんなパムさんとお兄ちゃんが仲良くしてるのを見ると……心の奥がモヤッとする。
 なんでかはわからないし、モヤっとしたのが何なのかも、わからない。
 普通に仲良くしているときは、モヤってしないときもあるのに。
 どうしてかな……私、変になっちゃったのかな。
 こんな気持ち、初めて……


 お兄ちゃん……真一くんは、ずっと昔から一緒だった。


 思い出せる一番昔の頃から、もう真一くんは私の側にいた。
 遊ぶのも、勉強するのも、ご飯やお風呂だって一緒だった。
 今のお父さん達の所に来てからも、それは変わらなかった。

 いつも一緒にいた、本当の兄妹のような存在。
 だから私も、いつの間にか真一くんの事を「お兄ちゃん」って呼ぶようになったの。

 ずっと一緒だった。
 これからも一緒だと思ってた。
 なのに、お兄ちゃんだけがどんどん離れていっちゃう。
 私の隣から、いなくなっちゃう……
 でも、そんなこと、ないよね?
 お兄ちゃんは側にいてくれるよね?
 みんなみたいに、どこかに行ったりしないよね……?


 ──あれ?
 「みんな」って、だれ?


「スセリ〜、お風呂入っちゃいなさ〜い」
「あっ……はぁ〜い」
 階下からのお母さんの声で、目が覚めた。
 考え事をしているウチに、いつの間にかお昼寝しちゃってたみたい。
 あれ? でも私、何の考え事をしてたんだろう?
 寂しいような気持ちはちょっと残ってるんだけど……
「きゅっきゅっきゅ〜」
「あっ、ぷちな? ……ごめんね、心配させちゃった?」
「きゅい〜♪」
 そういえば私、さっきまで何を考えてたんだろう?
 思い出せないことは重要じゃない、ってお兄ちゃんが言ってたけど……


 お風呂に入って、ゆっくりしながら考えてみたけど。
 さっきまで考えていたことは、もう思い出せなかった。
 う〜ん、気になるよぅ……


「……きゅっ……♪」



【終わり】


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