朝はパンを持って、お兄ちゃんの家へ。
チャイムを鳴らして、鍵を開けて、お家の中に入って。
暖房を付けて牛乳を用意していると、お兄ちゃんが起きてくる。
それはいつもの朝。
お昼は学園で、二人一緒にご飯を食べるの。
週に二回は、学食で。
週に三回は、私の持ってきたパンで。
暖かい日は屋上で。寒い日は教室の机で。
昨日のテレビの話や、新しい漫画の事を話しながら食べるご飯。
それはいつものお昼。
夕方は一緒に帰って、お家の前でお別れ。
私はお店のお手伝い。お兄ちゃんはアルバイト。
商店街の方で働いているって言ってたけど、お兄ちゃんは何屋さんなのかな。
そういう私のお家は、パン屋さんなの。
夕方になると忙しいから、いつも手伝ってるんだよ。
……っていうのが、ちょっと前までの私の生活でした。
でも今は、ちょっとだけ違うんです。
朝は、お兄ちゃんがパンを取りに来る。
量は二人分。お兄ちゃんと、パムさんの分。
パムさんは私のパンのことを、凄く気に入ってくれてるみたい。
沢山食べてくれるのが嬉しいから、私もつい沢山用意しちゃうの。
お昼は3人で一緒。
でも最近は、お兄ちゃんとパムさんが一緒に学食に行くことが多いかな?
私はこよりちゃんとか、シャロンちゃん達とご飯を食べることが多くなったみたい。
シャロンちゃん達はいつも面白いことを言って、笑わせてくれるんだよ。
夕方はお兄ちゃんとパムさん、私の3人で帰宅。
途中でラーメン屋に寄ったり、お買い物をしたり。
特にパムさんは人間の世界を全然知らないみたいで、興味津々。
いろいろ教えているウチに、私も新しいことを発見しちゃったりするの。
お兄ちゃんが間違って召喚して使い魔にしちゃった女の子。パムさん。
私からしてみれば、パムさんは新しい友達。
話してるだけでも面白いし、毎日が賑やかになるのは、とても良いこと。
……なのに、なんでかな。
最近、どこか寂しく感じるの。
パムさんは私の友達。お兄ちゃんは仲良し。
でも、そんなパムさんとお兄ちゃんが仲良くしてるのを見ると……心の奥がモヤッとする。
なんでかはわからないし、モヤっとしたのが何なのかも、わからない。
普通に仲良くしているときは、モヤってしないときもあるのに。
どうしてかな……私、変になっちゃったのかな。
こんな気持ち、初めて……
お兄ちゃん……真一くんは、ずっと昔から一緒だった。
思い出せる一番昔の頃から、もう真一くんは私の側にいた。
遊ぶのも、勉強するのも、ご飯やお風呂だって一緒だった。
今のお父さん達の所に来てからも、それは変わらなかった。
いつも一緒にいた、本当の兄妹のような存在。
だから私も、いつの間にか真一くんの事を「お兄ちゃん」って呼ぶようになったの。
ずっと一緒だった。
これからも一緒だと思ってた。
なのに、お兄ちゃんだけがどんどん離れていっちゃう。
私の隣から、いなくなっちゃう……
でも、そんなこと、ないよね?
お兄ちゃんは側にいてくれるよね?
みんなみたいに、どこかに行ったりしないよね……?
──あれ?
「みんな」って、だれ?
「スセリ〜、お風呂入っちゃいなさ〜い」
「あっ……はぁ〜い」
階下からのお母さんの声で、目が覚めた。
考え事をしているウチに、いつの間にかお昼寝しちゃってたみたい。
あれ? でも私、何の考え事をしてたんだろう?
寂しいような気持ちはちょっと残ってるんだけど……
「きゅっきゅっきゅ〜」
「あっ、ぷちな? ……ごめんね、心配させちゃった?」
「きゅい〜♪」
そういえば私、さっきまで何を考えてたんだろう?
思い出せないことは重要じゃない、ってお兄ちゃんが言ってたけど……
お風呂に入って、ゆっくりしながら考えてみたけど。
さっきまで考えていたことは、もう思い出せなかった。
う〜ん、気になるよぅ……
「……きゅっ……♪」
【終わり】
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